ゆめちゃんダイアリーは山中真理子作成のフィクションストーリーです。 途中から読んでもわかりづらいので1話からどうぞ。シリーズはこちらから
Contents
登場人物
ゆめちゃん:物語の主人公35歳主婦二児の母
一郎 :ゆめちゃんの旦那さん
かいと :ゆめちゃんちの長男
らいと :ゆめちゃんちの次男
佐藤さん :園バス停で一緒のママ友
ゆめちゃんの前に現れたおばちゃん
途中から読んでもわかりづらいので1話からどうぞ。シリーズはこちらから
ゆめちゃんがしょんぼり座っていると、一人の老婦人がブースに近づいてきた。
グレーの髪にパールのピアス。
紺のトレンチコートをウエストでキュッと結んでオシャレなおばあちゃまだ。
フリマ目当てではなく、光友デパートに買い物に来たお客に違いない。
おばあちゃま「あら、どれも可愛いわねぇ。ちょっと見せて頂戴ね」
そういうと、その老婦人は丁寧な手つきでゆめちゃんの商品を表から見たり裏から見たりして言った
おばあちゃま「随分と丁寧に作っているのね、感心したわ。これを作るのにずいぶん時間がかかったでしょう?」
ゆめ「は、はい、そうなんです。子どもが使うものだから丈夫にもしたいと思って」
おばあちゃま
「私も縫物が好きでね、昔はよく縫ったものよ。
今みたいに電動ミシンなんかなくてね、足踏みミシンでね」
ゆめ「そうなんですねぇ!」
おばあちゃま
「作ると、子どもが喜んでくれてね。
でも今は随分目が悪くなって糸を通すのも難しくなってしまってやめてしまったの。
でも、あなたのこのバッグを見ていたら自分が縫っていた頃のことを思い出すわ」
ゆめちゃんは自分と同じように縫物を愛する人と出会えて心が温かくなった。
おばあちゃま
「これ、いただくわ!孫にあげようと思うの。
この色、孫が大好きなピンクだもの、きっと喜ぶと思うわ!」
そういうと、おばあちゃまはバッグから綺麗な革財布を取り出し、お金を出した。
値段が安いからでもなく、商品を認めてもらえて買っていただけた。
値下げ交渉されることもなく、よろこんで買っていただけた。
ゆめちゃんはそのことに感動していた。
袋にバッグを入れていると、
佐藤さんが「これ、おまけ!」と言って試供品を袋にポンと放り込んだ。
おそらく、持ち帰りたくないのだろう。
佐藤さんはこういう時、調子がいい。
おばあちゃまは袋を受け取ると、ゆめちゃんにお礼言って立ち去った。
ゆめ「ありがとうございました!」
ゆめちゃんは今日一番の大きな声でお礼をいい、頭を下げた。
夕方になり、徐々にブースを片づけ始めるところが出てきた。
佐藤さんのブースに残っていたと思われた三輪車にはすでに買い手がついていた。
どうやら、出店者が朝のうちに買って、取り置きをお願いしていたらしい。
ブースを片づけると、さっと佐藤さんにお金を払って三輪車を持って行った。
佐藤さん商売上手だなぁ。ゆめちゃんはいつも佐藤さんに驚かされる。
終わってみれば、惨敗だった。
少しは売れたが、大半が残ってしまった。
はじめてなのに頑張ったじゃない!と佐藤さんは声をかけてくれたが、なかなかそうは思えない。
スーツケースは相変わらず重たいままだった。
一郎と子どもたちが迎えに来てくれた。
悔しい気持ちでいっぱいだったが、
子どもたちの顔をみたらなんだかホッとしたような、複雑な気持ちだった。
一郎はスーツケースを持ち上げると「えっ?」というような顔をしていた。
おそらく、朝と同じぐらいの重さだと気が付いたのだろう。
ゆめちゃんは一郎と目を合わせられなかった。
車では子供たちが騒いでいた。
かいと、らいと「ハンバーグ、ハンバーグ」
2人でビッグミートのCMの曲を歌っている。
とても、今日はあまり売れなかったなんて言えない。
「ママがんばってきたよ!」言えたのはそれだけだった。
ビッグミートにて
ビックミートで席に着くと、
子どもたちはすぐにサラダとドリンクバーに行ってしまった。
一郎「ゆめ、おつかれさん!」
ゆめ
「うん、ありがとう。正直反省することばっかりだよ。
でも、出てよかった。色んな事を学んだ!」
確かに至らない点は沢山あった。
商品づくりの時から、考えが足りなかった。
サイズも布選びも。
それに値段付けもフリマの特性を考えていなかった。
それでも、ゆめちゃんは落ち込んでいるだけではなかった。
そう思えたのはあのおばあちゃまのおかげだ。
一郎にもおばあちゃまと話したことを伝えた。
嬉しくて仕方がなかったのだ。
一郎
「ゆめがそんなに楽しそうにしているの久しぶりだね」
一郎のまなざしは温かかった。
その時、ゆめちゃんのお腹がぐぅとなった。
結局買った焼きそばは半分ぐらいしか食べられなかったのだ。
腹ペコだった。久しぶりのビックミートのハンバーグは美味しかった。
かいともらいとも口の周りにハンバーグのソースをつけたまま今日遊んだ話をしていた。
喧嘩することはあっても2人は仲良しだ。
2人で同じ話を一生懸命するので、一郎と顔を見合わせて笑ってしまった。
とても幸せなひと時だった。
食事が終わると、一郎がサッとお会計票を持ってレジに向かった。
ゆめ「えっ、今日は私が払うんじゃ・・・」
一郎はくるりとこちらを向くと言った
一郎
「今日はさ、ゆめが一歩踏み出したお祝いな!
出世払いってことで次は期待してるから!」
そう言うと、子どもたちがトイレに行っている間に会計を済ませてくれた。
ゆめちゃんは一郎に近づくと、腕を組んでギュッとした。
ゆめ「ありがとう、一郎」
一郎はきっとスーツケースが重たいことですべてを悟ったに違いない。
それで、払ってくれたのだろう。
いつか、いや、次にどこかに出店するときはちゃんと売り上げを出そう。
それで今度は絶対に自分で払おう。
ゆめちゃんはそう心に決めたのでした・・・・・
カイセツ
はじめてのフリーマーケットで色々なことを学んだゆめちゃん。
イベントは何度出ても発見があります。
準備していても、天候に恵まれなかったり
商品がことのほか早く売れてしまいチャンスを逃したり
ブースの場所が悪く人があまり立ち寄らなかったり。
それでも、出てみると人との嬉しい出会いがあることも。
ネットでの販売と違いリアルにお客様と話せるのもイベントの面白さですね。
なんだかんだ言いながらも優しい一郎。
こうやって時に家族に助けられることもありますね。
さあ、沢山売れ残ってしまったゆめちゃんの商品。
どうするのか!?
次回をお楽しみに~
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